『計画をたてる』ことの大切さ

起業件数より倒産件数の方が多いといわれる昨今ですが、それでも毎年数多くの企業が生まれています。しかし、その中で軌道に乗る企業はごくわずかで、ほとんどの企業は経営が立ち行かなくなり、倒産してしまいます。軌道に乗り、成長する企業とそうでない企業を分けるものは何なのでしょうか。

どんどん成長する企業の経営者の共通点として、「継続して利益を生み出す仕組みをつくるのが上手」であることが挙げられます。では、どうすれば継続して利益を生み出すことができるのでしょうか。その決め手となるのは、「事業計画書」です。

事業計画書は、融資や助成金を申請するためだけのものではありません。到達したい目標地点を明確にし、そのための道筋を明らかにしていくことで確実に事業を発展・推進させていく道標（みちしるべ）となるものです。『事業計画書のない事業運営は、目的地も決めず地図も持たずにドライブに出かけるようなもの』なのです。

まずは、事業計画書の活用で明暗を分けた例を見てみましょう。

サービス業のＡさんは、創業融資を受けて1年が経過しました。融資を申請する際には、コンサルタントのアドバイスを受けて綿密な事業計画を作成しましたが、融資実行後は一度も開くことがありませんでした。当初、順調に進んでいる間は良かったのですが、大手同業者の値引き攻勢が原因で、売上の60パーセントを占める大口の取引先を失いました。全ての指示は社長が出していましたので、部下もどう動けば良いか分からず、がむしゃらに営業をしていましたが結果は芳しくありません。従業員の給与を支払うことも厳しくなり、解雇もやむなしという状況です。

 サービス業のＢさんは、創業融資を受けて半年が経過しています。従業員には毎日自分の「夢」を語り、事業計画書も全てオープンにしていました。定期的にミーティングを開き、事業計画を元に起こりえるリスクや営業の目標を掘り起こし、皆で改善策を考えるようにしていました。3ヶ月ほど過ぎ、Ａさんと同様に大口の取引先を失ったばかりでなく、体調を崩した社長が1ヶ月寝込むという事態になりました。

しかし、日頃から情報を共有していただけでなく、大口取引先に頼るリスクは事前に想定していました。そのため、社長がいない間にも対応がなされ、目星をつけていた新規取引先の獲得で事なきを得たのです。

 さて、Ａさん、Ｂさんの明暗を分けた要因はなんだったのでしょうか。

①計画をたてて、推移をモニタリングする
もっとも重要なことは、「計画をたてて、常にモニタリングすること」です。自分の頭の中だけに計画をおいていたＡさんに比べ、Ｂさんは事業計画書を従業員と一緒に、計画の達成率をモニタリングしていました。そればかりでなく、事業計画作成時に、リスクに対するシミュレーションも予め行われていたので、問題の発生に備えが出来ていたことが大きな要因でした。

＜②目標を設定する＞
もう一つの重要な要因は「目標の設定」です。Ｂさんは、厳しい事業環境を踏まえ、スタッフとも打ち合わせて、事業計画の目標数値より上乗せした営業目標を掲げていました。残念ながら設定した目標はクリアできませんでしたが、明確な目標を掲げていたからこそ、新しい取引先の開拓に手を抜かずに済んだのです。それが、急場の取引先獲得に繋がりました。このことからも、達成したい目標を掲げるということには大きな意味があるといえます。

以上のような話を踏まえて、 もし、あなたの事業計画書が埃を被っているようでしたら、ぜひ見直してみてください。

創業時の「夢」や「理想」が想い出されて、きっと勇気が湧いてきます。また、事業計画書がない、もしくは、まともな計画書がない、という場合は、日頃お世話になっている税理士や会計士、経営コンサルタントの方に作成をお願いしてみて下さい。その依頼を気持ちよく引き受けられない方々は、残念ながら、あなたが必要としている参謀／ブレーンでは無いかもしれませんので、依頼先を代えることも一つの選択肢だと思われます。