更新日:2013/05/15
SankeiBiz 5月15日(水)8時15分配信
政府は14日、産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)を開き、安倍政権の経済政策「アベノミクス」の第三の矢となる成長戦略の取りまとめに入った。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)など経済連携の推進や国主導で規制緩和や税制優遇に取り組む「国家戦略特区」の創設が目玉になる見通しで、6月に策定する。長引くデフレからの脱却を果たし、経済再生につなげられるか。推進力が試される。
成長戦略は大胆な金融緩和、機動的な財政運営に続くアベノミクスの柱で、日本経済再生本部の下に設置した産業競争力会議で具体策を検討。規制改革会議や総合科学技術会議などでも議論してきた。
この日の競争力会議では、これまでの検討事項を「ニッポン産業再興プラン」「戦略市場創造プラン」「国際展開戦略」の3つに分けて整理。安倍首相は「優先順位をどのように付けていくか、世界にどのようなメッセージを発信していくか議論していきたい」と強調した。
政府は成長戦略を6月中旬に閣議決定。英国で開かれる主要8カ国(G8)首脳会議で安倍首相が説明する方針だ。
主な検討事項をみると、TPPなど経済連携について「国益の確保を大前提として戦略的に推進」、国家戦略特区も「既存の特区の現状を検証し、国の主体的な関与を高める方向で抜本的な強化を検討」と明記した。
経済連携の推進は産業界の要望が強く、すでに安倍首相は3月にTPP交渉参加を表明。先行参加11カ国の了承も得て、米国の議会手続き終了後の7月下旬には交渉入りが正式に決まる。
国家戦略特区は地域の魅力を高め、国内外の企業誘致を拡大するのが狙いで、政府は今月10日に有識者による作業部会の初会合を開いて具体的な制度設計に着手した。
このほか、検討事項には今後5年間を「緊急構造改革期間」として産業構造改革策を集中することや職種などを限定した正社員制度の整備、先端医療研究の司令塔組織の創設、農地貸借を仲介する新組織を各都道府県に設置することなどが盛り込まれた。
ただ、産業界が求めていた農業への株式会社参入要件の緩和は農業団体などの強い反対で盛り込まれず、雇用ルールの見直しなども見送られた。7月の参院選を控え、業界団体などとの調整が難航しそうな規制改革は踏み込み不足との批判も招く可能性がある。
■産業競争力会議の主な検討事項
▼大胆な規制緩和と税制措置を行う「国家戦略特区」の創設
▼TPPなど国益に資する経済連携交渉の推進
▼産業構造改革策を今後5年間で集中実施
▼勤務地や職種を限定した正社員制度の整備
▼先端医療研究の司令塔組織の創設
▼農地貸借を仲介する新組織を各都道府県に設置